「村上春樹を読んで得るものはあるのか?」
皆さま
おはようございます、こんにちは、こんばんは、そしてお疲れ様でございます。
先日、久しぶりに村上春樹先生の本を読み返してみました。
タイトルは『羊をめぐる冒険』。
この作品は先生の作品の中では上位4番目には入るくらいの好きな一冊です。
最近読んだ本では、怖いなぁとか、ハッピーエンドで良かった!などの感情が生まれましたが、
基本的に村上春樹作品は読後に何かすごく役立つ知識が身についたとか、人生の答えが見つかったとか、そんなことは一切ないです。
「何かを得るために読むものじゃないな」と。
ただ、ページをめくるごとにじわじわと春樹ワールドに浸かっていく感覚があるだけなんですよね。
それでも、なぜか お酒が飲みたくなったり、ジャズやクラシックを聴きたくなったり するのは、春樹作品あるあるではないでしょうか。
登場人物たちは、やたらとカクテルを飲み、朝食にはサンドイッチを作りコーヒーを淹れ、ベッドではタバコをふかしながら心地よさそうに音楽を流します。
ここで村上春樹作品あるあるをご紹介します。
1. 主人公はだいたい「僕」。
→名前もわからないことが多い
2. やたらと料理を作る。
3. ジャズ、クラシック、ビートルズ
→「僕」は当然のように音楽に詳しい。
4. 妙にセクシーな女性キャラが登場。
5. やたらとジョギングや水泳をする。
6. 大事なものを失くす、もしくは人が消える。
7. ストーリーが進んでいるようで、進んでいない
→ 何か事件が起きるようで起きず、ゆるやかに日常が続く。でも読んでしまう不思議な中毒性。
さらに少しでも春樹ワールドの雰囲気が伝わるように。
村上春樹作品に出てきそうなハードボイルド風の会話の例をいくつか挙げてみます。
1. バーでの会話
「何を飲んでるんだ?」
♂️「バーボンのロックさ。」
「それだけ?」
♂️「人生に必要なものは、たいていシンプルなものだ。」
2. 恋愛に関する会話
「君は僕のことが好きなのか?」
♀️「そんな単純な話じゃないわ。」
「じゃあ、どういう話なんだ?」
♀️「たぶん、君が考えてるより少しややこしい話。」
3. 深夜の電話
「まだ起きてたのか?」
♂️「眠れなくてね。」
「何を考えてた?」
♂️「世界の終わりと、君のことさ。」
4. 意味深な謎の人物との会話
♂️「知ってるか?この世界には二種類の人間がいる。」
「どんな人間だ?」
♂️「何も考えずに生きる人間と、考えすぎて生きるのが難しくなる人間さ。」
「君は後者だろ?」
♂️「それはどうだろうな。」
5. 何かを失ったときの会話
「大事なものを失ったって?」
♂️「そうさ。気づいたら、もうどこにもなかった。」
「それは探せば見つかるものか?」
♂️「たぶんね。でも、問題は見つけたときに同じものなのかどうかってことだ。」
6. 井戸について語る
「井戸を覗いたことはあるか?」
♂️「あるさ。深くて、暗くて、底なんて見えなかった。」
「恐ろしくなかったか?」
♂️「むしろ、落ちてみるのも悪くないと思ったよ。」
7. コーヒーとタバコと孤独
「何してる?」
♂️「コーヒーを淹れて、一人で煙草を吸ってる。」
「それで何が変わる?」
♂️「たぶん何も。でも、何かが変わるのを待つにはちょうどいい時間だ。」
8. 「名前」のない女との会話
「君の名前を聞いてもいいか?」
♀️「そんなもの、たいした意味はないわ。」
「でも、僕は知りたいんだ。」
♀️「じゃあ、好きな名前で呼んで。」
特に初期の作品では必ずと言っていいほどにどれかに近い会話描写が登場します。
でも結局、それで「何かを得るの?」というより 「何かにひたる」 ことなんですよね。
村上春樹の世界観は、妙に淡々としているのに、同時に強烈なリアリティがある。
かと思いきや、ファンタジーな世界に強烈なノスタルジーを感じさせる。
そのリアリティは、物語の内容というより “空気”そのもの だったりする。
だから、読んだ後に「うん、何かを学んだな!」とはならないけど、確実に心のどこかが春樹モードになります。
気づいたら、薄暗いバーに行きたくなって、ジャズを流しながら、ウイスキーをちびちび飲んでいる自分がいるかもしれません。
そしてお酒を飲みすぎて、頭を抱えながら朝を迎えます。
それでいいんです。それが村上春樹なんです。
ではでは、今夜はハイボール片手に『ダンス・ダンス・ダンス』でも読もうかな。
皆さまも、どうぞ良い春樹時間を。