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「読後、脳髄が震える一冊——『儚い羊たちの祝宴』」

高木 健人

筆者 高木 健人

不動産キャリア10年



『脳髄を冷たく痺れさせる。』



そんな触れ込みに惹かれて手に取った、米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』




その前に



著者の米澤穂信の事は知らなくてもTVアニメ『氷菓』、『小市民シリーズ』を知っているという人もいるのではないでしょうか?

まさか同じ原作者とは思えないほどに打って変わりこちらは日常の謎を解き明かす青春ミステリ。









いや、振り幅すごすぎます。





『儚い羊たちの祝宴』に話を戻します。



実際に読み進めてみると、痺れるどころの話ではなかった。




うなじから頭の先までじわじわと揺さぶられ、脳髄がドロドロに溶けていくような感覚。


その背筋を這い上がるような不穏さに吐き気すら覚える。



それなのに、ページをめくる手が止まらない。


甘美で耽美な語り口、情景を容易に脳裏へ焼きつける巧みな表現、じわじわと忍び寄る不安と狂気——。


読み進めるたびに現実との境界線が曖昧になり、いつの間にかこの陰鬱で残酷な世界に囚われてしまう。



2023年、米澤穂信の人気No.1作品というだけあって、その期待を悠々と超える完成度。



読み終わるや否や、反射的にAmazonで次の一冊をポチり



そしてまた、同じように気分が悪くなる短編を楽しんでいる自分がいる。



——なぜ、こんなにも気持ち悪くなるのに読んでしまうのか?



それは、この作品が現実では味わうことのできない、美しくも歪んだ非日常的な世界を描き出しているから。



その世界に浸り、堕ちていく快感に抗えないから。



まるで悪夢のような物語の余韻に酔いしれるために、またページをめくってしまう。



少しでも興味を持っていただけたら、ぜひこの本を手に取ってみてほしいと思います。


最後に、作中で特に印象に残ったキーワードを二つ——。





「始めちょろちょろ 中ぱっぱ 赤子泣いても蓋とるな」



「あまりさんは、紫の手袋をしているのね。これもいずれ、赤く変わるわ」





この文章の本当の意味が理解した時の感覚をぜひ味わっていただきたいです。