中世×ミステリーの異色傑作『折れた竜骨』を読んで
米澤穂信さんといえば、『氷菓』や『満願』など、現代を舞台にしたミステリーの名手という印象が強い作家です。
しかし、今回読んだ『折れた竜骨』は、まったく異なる舞台設定と語り口でありながら、まぎれもなく“米澤ミステリー”の真髄を感じさせてくれる一冊でした。
舞台は中世ヨーロッパ。だけど、しっかり「本格ミステリー」
物語の舞台は、14世紀のイギリス・イングランドの沖合に浮かぶ架空の島「ウィンガル島」。
ある夜、島の領主の娘が何者かに殺される事件が起こり、その捜査に乗り出したのが、騎士ファルクと修道女アミーナです。
この設定だけでもう、ワクワクしますよね。
しかも、米澤作品らしく「魔術」や「呪い」のような要素も漂わせつつ、しっかりと論理で解かれる本格ミステリーなんです。
魔法が信じられていた時代に、どうやって“現実”をもって真実に辿り着くのか。
その構成が、とにかく巧妙で、途中からはもうページをめくる手が止まりませんでした。
ちなみのこちらが米澤穂信さんです。
騎士と修道女、2人の探偵役の静かで熱い“共闘”
この物語の魅力のひとつは、ファルクとアミーナのバディ感。
正義感と冷静さをあわせ持つファルクと、理知的で洞察力に優れたアミーナのやりとりが、とても知的で美しい。
中世らしい“身分の壁”や“信仰の制約”といった制限の中で、ふたりがどう真相に迫っていくのか。
ラストの展開には、思わず静かに息を飲んでしまいました。
まったく異なるジャンルに見えて、通底するのは「静けさの中にある熱」と「論理と感情の両立」。
それは米澤作品に一貫する魅力であり、本作でもしっかりと息づいています。
『折れた竜骨』は、歴史好きにも、ミステリーファンにも、自信を持っておすすめできる一冊です。
読了後の余韻度:★★★★★
中世異世界×本格ミステリーの完成度:★★★★★
伏線回収の鮮やかさ:★★★★☆